喘息(ぜんそく)について
喘息(ぜんそく)は、気管支に慢性炎症があり、気道過敏性が亢進し、さまざまな刺激で気管支が狭窄し、呼吸困難をきたす疾患です。小児で5~7%、成人で3~5%が患っています。悪性疾患では無いのですが、コントロール不良だと死亡する事もあり、我が国では1995年に7253名亡くなりましたが、2012年には1874名に減少しています。ステロイド吸入薬の販売量の増加とともに減少してきており、抗炎症作用の強いステロイド吸入療法が現在最も基本的な治療と考えられています。現在、喘息死亡患者の約90%は65歳以上の高齢者となっており、この原因としてはCOPD合併や認知症によりステロイド吸入療法が適正に行われていないことが考えられます。COPD治療併用や吸入療法の指導など患者教育を繰り返す必要があります。
喘息死亡者の重症度は、軽症7.4%、中等症33.0%、重症39.2%、不明20.3%となっており、軽症だからといって決して安心できるものではありません。
成人の喘息治療におけるハイリスクグループ
- ステロイド薬の全身投与中あるいは中止したばかりである
- 過去の1年間に喘息発作による入院の既往がある
- 過去の1年間に喘息発作により救急外来を受診している
- 喘息発作で気管内挿管をされたことがある
- 精神障害を合併している
- 喘息の治療計画に従わない
- 現在吸入ステロイド薬を使用していない
- 短時間作用性β2刺激薬の過度依存がある
小児の喘息死の危険因子
- 男>女
- 15歳以上
- 難治性喘息
- 致死的喘息発作救命例(重篤発作の既往歴)
- pMDI過度依存傾向
- 不規則な通院治療(アドヒアランスの悪さ)
- 頻回の救急室受診
- 重篤な食物・薬物アレルギー歴
- 合併症
乳児の下気道感染症
10歳以上の右心肥大 - 外科的緊急手術
- 欠損・崩壊家庭、独居
- こだわらない、活動的性格
- 性格傾向(異常な分離・喪失感など)
- 患者を取り巻く医療環境の不備
上記に当てはまる場合は、より注意深く加療していくことが必要であり、また患者教育が必要になります。
こんな症状ありませんか?
基本的なぜんそくの症状
- 咳が出る
- 呼吸が苦しい、胸が圧迫される感じがする(息切れがする)
- 息を吐くとき、のどがゼーゼーヒューヒュー鳴る
- のどがイガイガする
- たんが出る
- 呼吸機能の低下
見逃しやすいぜんそくの症状
- ちょっとした刺激※で咳き込む
- かぜをひきやすい、かぜが長引く
- 夜、咳や息苦しさで目が覚めてしまう
※刺激とは:ちょっと走る(運動)、階段、坂道を上がる、大声で笑う、ホコリやタバコの煙、疲労やストレス
このような症状があるあなたは、ぜんそくかもしれません
ぜんそくってどんな病気?
ぜんそくは、気道にアレルギー性炎症が起こり、気道が狭くなる病気です
正常な気道の断面
ぜんそく患者さんの気道の断面
ぜんそくを引き起こす要因
気道にアレルギー反応を起こさせて、炎症を起こすもの
気道を刺激して炎症を誘発するもの
ぜんそくを引き起こす要因は何が多いのでしょうか?
ぜんそく治療の基本は、“薬物療法”と“日常管理”です
薬物療法
日常管理
1990年代以前と以降では、ぜんそく治療の方法が違います
1990年代以前
ぜんそくは、“気道が狭くなる病気”と考えられていました。
行われていたのは、症状がでた時だけ薬を使う“一時しのぎ治療”でした。
1990年代以降
ぜんそくは、“気道に炎症が起こる病気”と考えられるようになりました。
症状がない時でも、症状がでないように毎日薬を使うことが大切です。
ぜんそくは、症状がなくても治療を続けることが大切です
発作は早めに対処しましょう
発作の前ぶれを感じたり、ゼーゼ―し始めたら、早めに速効性の気管支拡張薬を吸入しましょう。決して苦しいのを我慢してはいけません。
ぜんそくの主な前ぶれ
- のどがイガイガする
- 咳が出る
- 胸が圧迫される感じ
- のどがヒューヒュー鳴る
- たんが出る
- 呼吸機能が低下(ピークフロー値の低下)
発作が激しくなった場合は、発作治療薬として医師に指示された回数の速効性の気管支拡張薬を吸入するなどし、効果がみられないときは速やかに医師の治療を受けましょう。
ぜんそく治療の目標
- 健常人と変わらない日常生活が送れること。
正常な発育が保たれること。 - 正常に近い呼吸機能を維持すること。
-PEFの変動が予測値の20%未満。
-PEFが予測値の80%以上。 - 夜間や早朝の咳や呼吸困難がなく十分な夜間睡眠が可能なこと。
- ぜんそく発作が起こらないこと。
- ぜんそく死の回避
- 治療薬による副作用がないこと。
- 非可逆的な気道リモデリングへの進展を防ぐこと。